大人のスキップ

日々のことや好きなものについて

夏がとまらない

息子「なんで死んじゃったの?」

母親「夏ももう終わりだからねぇ…」

息子「ずっと夏が続けばいいのにね」

秋の来訪を思わせる涼しい風が吹いた今日、5歳くらいの男の子とその母親が、蝉の死骸を覗き込みながらこんな会話をしていて、さらば青春の光よろしく「漫画やん!」と心の中でツッコミを入れてしまった。イヤホンを外して街を歩いていると、稀に「あっ、なんかいいな」と思う会話に出会うことがある。そんな日はちょっと嬉しい。

ところで、ツイッターを見ていると、嘘か本当か分からない、街で見かけた面白人間模様みたいなのが流れてきて、本当かよと思うことが多々ある。でもそれは、単に自分の知覚できている世界が狭いだけで、この世界のどこかでは嘘みたいな本当の出来事が起きているかもしれない。そうだったらうんと面白いな、なんてことを、ふらっと立ち寄った藤岡拓太郎の個展を見ていて思った。『夏がとまらない』の出版元のナナロク社の村井光男曰く、彼の作品は「ないない」を「あるある」のように描く。奇人変人が織りなす不条理でシュールな出来事は、まさに「ないない」なのだけれど、もしかすると何処かには本当にこんな人達がいるのかもしれないな、と思わせるパワフルさがある。

藤岡拓太郎作品集 夏がとまらない

藤岡拓太郎作品集 夏がとまらない

 

シンプルに笑えるもの以外に、どこか情緒的な作品も魅力的で、最近だと「夏のこども」という作品が大好きだ。このたった1ページの中に描写された、風景、物、人物の表情、少ないセリフとそのニュアンス、コマごとの視点の切り替え。それらによって、ページの外側に存在するであろう物語に、読む者の想像力を働かさせる。これぞ漫画やん。というか、もはや映画やん。

映画といえば、今話題の『カメラを止めるな!』がとても面白かった。小劇場ということもあってか、後半になるにつれて客席にもグルーヴのようなものが生まれていて、素晴らしい映画体験だった。劇場で映画を観ることの喜びよ。内容について深くは触れないが、序盤の違和感を後半の展開で快感に変えていく後味の良さが、なんだかナイツの野球の漫才みたいだなと思った。

なんだかんだ言って、明日からはまた暑くなるらしい。これを書いている僕はと言えば、京葉線に揺られてソニックマニアに向かう途中だ。夏はまだ終わらない。

f:id:taka_71:20180817203211j:image